こんにちは。『売れるネット広告社』代表取締役社長 CEO 加藤公一レオです。
化粧品や健康食品のマーケティングに携わっていると避けて通れないのが薬機法だが2021年8月、改正薬機法が施行され、新たに課徴金制度が加わることになっている。
そこで、改正薬機法施行前のこのタイミングで、「知らなかった」では済まされない薬機法について、改めて基礎から徹底的に解説していきたい。
第3回となる今回は、化粧品の広告表現において注意すべき点を、OK表現・NG表現を交えて具体的にご紹介する。
一般化粧品で表示可能な効能効果は56種類
第1回でお伝えした通り、薬機法上の虚偽・誇大広告の規制対象は「何人も」となっている。
つまり、「広告主の違反はアウトだが広告代理店の違反はセーフ」とか「法人の違反ならアウトだが個人の違反ならセーフ」といった境界線はなく、誰もが規制対象となる。したがって、違反した場合は、広告主だけではく、広告代理店や広告制作会社、個人アフィリエイターなど、薬機法の対象となる広告に携わるあらゆる法人・個人が処罰の対象となり得るのだ!
医薬部外品や薬用化粧品を除く、一般化粧品で表示可能な効能効果は全部で56種類ある。
言い換えれば、化粧品の広告において、この56種類以外の効能効果は事実かどうかに関係なくうたうことはできない。たとえ事実であったとしても、56種類以外の効能効果を広告で表示した瞬間、薬機法違反になってしまうのである!!
※薬用化粧品の場合、厚生労働省に承認された効能効果の範囲内であれば表現が可能
一般化粧品で表示できる効能効果
「事実であっても定められた効能効果以外の表示はNG」というのが薬機法の怖いところだ。
一般化粧品の広告で表示できる56種類の効能効果を一覧で見てみよう。「56種類」と聞くと多く感じるかもしれないが、カテゴリーごとに見ていくと非常に限られていることがわかるだろう。
効能効果としてはやや漠然としていて訴求力に欠けるように思えるが、薬機法上の表示規制というのはこれほどまでに厳しいのである!!
◆頭皮や毛髪に関連するもの
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
◆肌に関連するもの
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)
(19)肌を整える
(20)肌のキメを整える
(21)皮膚をすこやかに保つ
(22)肌荒れを防ぐ
(23)肌をひきしめる
(24)皮膚にうるおいを与える
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ
(26)皮膚の柔軟性を保つ
(27)皮膚を保護する
(28)皮膚の乾燥を防ぐ
(29)肌を柔らげる
(30)肌にはりを与える
(31)肌にツヤを与える
(32)肌を滑らかにする
(33)ひげを剃りやすくする
(34)ひげそり後の肌を整える
(35)あせもを防ぐ(打粉・ベビーパウダー)
(36)日やけを防ぐ
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする ※
※(56)の効果をうたうには効能評価試験が必要となる
◆爪に関連するもの
(39)爪を保護する
(40)爪をすこやかに保つ
(41)爪にうるおいを与える
◆唇に関連するもの
(42)口唇の荒れを防ぐ
(43)口唇のキメを整える
(44)口唇にうるおいを与える
(45)口唇をすこやかにする
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ
(48)口唇を滑らかにする
◆歯や口に関連するもの
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(52)口中を浄化する(歯みがき類)
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
◆その他
(38)芳香を与える
「個人の感想です」で逃げても違法は違法
繰り返すが、薬機法上、一般化粧品の効能効果として表示できるのは上記56種類のみである。
第2回で、「このサプリメントを飲んだら、2週間で5kg痩せました。一生手放せません! ※個人の感想です」のような広告表現は「個人の感想です」という「打消し表現」を付けても、違法なものは違法であると紹介した。
「個人の感想です」という打消し表現を入れたからといって、薬機法の規制を逃れることができないのは化粧品においても同じだ!また、広告に掲載する「個人の感想」が実際にお客様から送られた“本物”の体験談であったとしても、薬機法で認められた56種類の(不必要なので削除お願いします。)以外の効能効果に触れる記載がある場合は薬機法違反になってしまうことに注意しよう!個人の感想かどうかに関係なく、一般化粧品の効能効果として定められている56種類以外の表示はできないのである。
この広告表現はOK?NG?
では実際に、どのような広告表現であればOKで、どのような表現であればNGになるのだろうか?具体例を挙げて、一般化粧品の広告におけるOK表現・NG表現を見ていこう。
〇:この美容液は、お肌に潤いを与え、ハリのあるお肌に導きます。
→56種類の効能効果の範囲内なのでOK!
○:この商品はパッケージがおしゃれ!かさばらないので、ポーチに入れていつも持ち歩いています。
→効能効果ではないためOK!(薬機法の規制を受けない)
○:このシャンプーを使うと髪にハリとコシが出て、気になる枝毛も防いでくれるんです。自然なバラの香りも気に入っています♪
→56種類の効能効果の範囲内なのでOK!「香りが気に入っている」は使用感なので、薬機法の規制を受けない。
○:洗顔は毎日のスキンケアの基本!この洗顔フォームは気になるニキビを防いでくれるんです。
→56種類の効能効果の範囲内なのでOK!ただし、洗顔以外の一般化粧品でのニキビ予防は表示不可となる。
×:この美容液に含まれる「◯◯」という成分にはアンチエイジング効果があります!
→老化防止効果は56種類の効能効果には当てはまらないためNG!商品に含まれる成分で暗示的に効能効果をうたうのもNG。「マイナス5歳肌」などの表現もアンチエイジングと同じ意味となるため表示不可となる。
×:このクリームにはシミやソバカスを消す効果があります。
→シミやソバカスがなくなるという表現は56種類の効能効果の範囲外なのでNG!
「このクリームはお肌にハリ・ツヤを与える効果があります」など、56種類の効能効果の範囲にとどめる必要がある。
×:このヘアトリートメントを使ったら、びっくりするほど髪の毛が生えてきたんです!もう手放せません。※個人の感想です。
→発毛効果は56種類の効能効果には当てはまらないためNG!すでに述べた通り、この体験談がたとえ事実であったとしても56種類以外の効能効果を広告でうたうことはできず、「個人の感想です」という打消し表現を入れても違法な表現が違法であることに変わりはない。
ここまで読んだあなたは、薬機法の広告表現規制が相当厳しいことを実感しているはずだ。
それと同時にこうも思っているのではないだろうか?「あれ、世の中平気でNG表現を使った広告だらけじゃん?」― 確かに、D2C(ネット通販)会社などの広告主以外の第三者が出稿している記事型広告を中心として、薬機法に違反する広告表現が散見される。
しかし最近では、個人アフィリエイターが摘発されたり、プラットフォームが広告掲載基準を引き上げ、不適切な広告を締め出したりと、薬機法に違反している広告への包囲網は確実に狭まっている!これまでは違法な広告表現が見逃されていたとしても今後はどんどん許されなくなっていくのである。
したがって、D2C(ネット通販)会社は、薬機法に抵触しない範囲で広告表現を最大限工夫することで商品の魅力を訴求していく必要がある。また、薬機法違反の温床となっているアフィリエイターによる記事型広告や、広告表現が強くなりがちなワンステップマーケティングなどのビジネスモデルを見直し、より本質的な形でネットマーケティングを行っていくべきだ。
そこで最終回となる次回は、薬機法を守りつつ売上と利益も上げられるネットマーケティング手法についてお伝えしたい。