こんにちは。『売れるネット広告社』代表取締役社長 CEO 加藤公一レオです。
健康食品や化粧品のマーケティングに携わっていると避けて通れないのが薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)だが、2021年8月、薬機法に関するさらなる改正が施行されることになっている。
今回施行される改正法では、これまでになかった課徴金制度が追加される点がポイントだ。それ以外にも、薬機法には広告表現に関するさまざまな規制や罰則が設けられている。
薬機法を知らないとなぜヤバいかというと、薬機法の広告表現に関する条項は「何人規制」、つまり広告主だけでなく、広告代理店や個人アフィリエイターまで、広告に関わるあらゆる人が規制対象になっているからだ!2020年7月の「ステラ漢方事件」で広告主や広告代理店関係者が逮捕されたように、違反した場合は刑事罰も十分にありうる。
そこで、改正法施行前のこのタイミングで、「知らなかった」では済まされない薬機法について、改めて基礎から徹底的に解説していきたい。第1回では、2021年8月の改正法施行で導入される課徴金制度と薬機法の規制対象について、詳しくお伝えする。
薬機法改正で課徴金制度追加
近年、虚偽・誇大広告をはじめとする薬機法違反が後を絶たず、ネット広告費がテレビ広告費を上回った今、虚偽・誇大広告にまつわる問題はますます深刻化している。長引くコロナ禍で免疫力アップや除菌効果をうたう商品が売上を伸ばしている中、新型コロナウイルス予防効果を標榜する食品やウイルス予防商品に関する注意喚起、優良誤認表示を理由とした行政処分も行われている。
そんな中、薬機法の一部改正により、2021年8月1日から新たに課徴金制度が加わることとなった!新設される課徴金制度では、虚偽・誇大広告を行った企業などに対し、課徴金対象期間中における該当商品売上高の4.5%を課徴金として納付することを命じることが決定している。
これまでは、虚偽・誇大広告(薬機法66条)に違反した際の罰金の水準は、個人・法人ともに最高200万円にとどまっていた。以前から「違法行為によって不当な利益を得た企業に対しては、その収益を取り上げるべき」との指摘がなされていたこともあり、今回新たに課徴金制度が導入されることになったのである。
課徴金は課徴金対象期間中の対象商品売上の4.5%
新たに設けられる課徴金制度においては、原則として虚偽・誇大広告規制違反を行っていた期間における対象商品の売上高の4.5%が課徴金として徴収される。
「利益」ではなく「売上」なので、4.5%というのは決して小さい数字ではない!2016年から課徴金制度が導入されている景表法の課徴金額は売上高の3%だが、改正薬機法の課徴金はそれを上回る割合となる。
また景表法では、課徴金の対象となる表示が優良誤認または有利誤認にあたることを知らず、かつ、知らないことについて相当の注意を怠った者でないと判断された場合、課徴金納付命令は出されない(景表法8条1項但書き)が、改正薬機法における課徴金は、対象者に過失がなくても課されることになっている。平たく言えば、知らなかったからといって処罰を免れることはできないのだ!
化粧品や場合によっては健康食品も薬機法の対象に
薬機法とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品等の品質・有効性および安全性を確保し、保健衛生上の危害の発生・拡大の防止を目的として制定された法律である。
広告については第66条~第68条に定められている。
第66条:虚偽又は誇大広告の禁止
第67条:特殊疾病に使用される医薬品又は再生医療等製品の広告方法の制限
第68条:承認前の医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品の広告の禁止
薬機法の対象となる商品は幅広く、化粧品や医薬部外品も含まれる。また、トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品は原則として医薬品にはあたらないが、その他の健康食品については、医薬品的な効果効能を標榜した場合は健康食品も薬機法の対象となる。
言い換えれば、一般の健康食品はあくまでも「食品」なので、事実であろうとなかろうと、医薬品的な効果効能をうたってしまうと薬機法違反になるということだ。「医薬品的な効能効果」がどういうものを指すかというと、次の3種類が挙げられる。
上記で例として挙げた表現の中には、一般健康食品の広告で見かけるものもある。
しかし、ただ摘発されていないだけで、特定保健用食品・栄養機能食品として認められている効能効果でない限り、上記の表現は薬機法的にはアウトであることをしっかり覚えておこう!
薬機法上の虚偽・誇大広告の規制対象は「何人も」
健康食品・化粧品等の販売やマーケティングに携わるにあたって、守らなければならない法律はいくつもあるが、特に薬機法に関して注意すべきが、第66条(虚偽・誇大広告等の禁止)と第68条(承認前医薬品等の広告の禁止)の規制対象が「何人も」となっている点だ。薬機法には下記のような規定があり、「何人も」から始まる条文があることがわかる。
◆虚偽・誇大広告等の禁止(法第66条)
「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」
◆承認前医薬品等の広告の禁止(法第68条)
「何人も、医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ承認又は認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない」
聞きなれない表現だが、「何人も」とは簡単にいうと「誰でも」ということだ。D2C(ネット通販)会社をはじめとする広告主だけではなく、広告代理店や制作会社、個人アフィリエイター、広告を掲載したメディアなど、対象となる商品の広告に携わる人であれば、誰もが薬機法違反の処罰対象になり得るのである!
2020年7月の「ステラ漢方事件」で広告主や広告代理店関係者が逮捕されたように、健康食品の広告を出稿していたD2C(ネット通販)会社や、その会社の広告の制作を請け負っていた代理店で働く人が逮捕されるケース、個人アフィリエイターが摘発されるケースも出ており、決して他人事では済まされない。
薬機法による広告表現の規制は非常に厳しいため、よほど気を付けないと知らないうちに“法律違反”になりかねない。そして、「知らなかった」「そんなつもりじゃなかった」が通用しないのが薬機法の怖いところである!!
行政指導や課徴金で済めばまだマシだが、刑事罰に発展した場合は個人の経歴に取り返しのつかない傷が付くことになってしまう。意図せず“犯罪者”になってしまわないよう、健康食品や化粧品の広告に携わる人は1人残らず、薬機法を理解して順守してほしい!
次回はより具体的に、健康食品の広告における注意点をOK表現・NG表現の例を含めてお伝えする。